社内イベントのひとつとして昔から存在する「社内運動会」ですが、近年、健康経営やエンゲージメント経営の文脈から、注目を集めています。
「これから、社内運動会を企画してみたい」
という方も、多いのではないでしょうか。
この記事では、社内運動会について知っておきたい基礎情報とリスク・デメリット、それらに対する対策について、見ていきたいと思います。
まず、なぜ社内運動会が注目されるのか、その意義について確認しておきましょう。
社内運動会とは?
社内運動会とは、会社で運動場や体育館などのスペースをレンタルし、従業員が集まってスポーツを楽しむイベントです。
2016年10月には、「「社内運動会」復権の兆し 社員の絆強め士気高まる 「一体となれるのが運動会の魅力」(産経ニュース)」という報道が出るなど、注目が集まっていました。
その後のコロナ禍により、運動会に限らず各種イベントが控えられましたが、これから再注目を浴びると思われます。
【参考:社内運動会を実施している企業事例】
・株式会社HSコーポレーション
【Vol.4】人と地域を楽しく、元気にする 運動会・体操教室・出張トレーニング(東京都スポーツ推進企業交流サイト)
・株式会社ローソン
全社員が参加する「健康大運動会」開催(ローソン公式サイト)
健康経営とエンゲージメント経営のクロス地点
なぜ、社内運動会が見直されているのでしょうか。
その理由として、近年の2つのトレンド「健康経営」と「エンゲージメント経営」の双方へ好影響が期待できること、が挙げられます。
【健康経営とエンゲージメント経営】
・健康経営
従業員の健康を経営課題として捉え、従業員の健康増進に取り組む手法。
経済産業省が推進している(詳しくは「健康経営の推進について(経済産業省)」参照)。
・エンゲージメント経営
従業員エンゲージメント(職場や業務に対する愛着感情や成長意欲)を重視して、企業の競争力や価値を高める手法。
社内運動会は、体を動かすきっかけを提供し、従業員の「健康」を増進する施策として、位置づけられます。
同時に、社内コミュニケーションの活性化や、スポーツを通じた結束によるチームビルディングなど、「従業員エンゲージメント」にも寄与する施策です。
以下は、先にご紹介した株式会社HSコーポレーションの事例からの引用です。
*1
部署や役職の垣根を超え、会社がひとつとなるポジティブな様子がうかがえます。
次に、社内運動会の企画を進めるうえで、知っておきたいリスクやデメリットについて、整理しておきましょう。
筆者自身、スポーツイベントを社内で企画した経験があります。現場で感じたことを含めながら、お伝えします。
(1)多様性への配慮
会社のカルチャーや雰囲気にもよりますが、
「社内運動会には、参加したくない」
という価値観を持つ従業員がいる場合があります。
心身の状態や、業務外の時間の使い方に対する意向など、理由はさまざまです。
あるいは従業員の家族も招待する形式では、プライベートな領域にも踏み込むため、敬遠する従業員もいます。
社内運動会を企画する側は、
「かならず全員に参加してもらって、社内の結束力を高めたい」
と、意気込みが強くなりがちです。
しかし、最初は多様性に配慮し、無理のない範囲でのスタートが望ましいと考えられます。
回を重ねるごとに、参加率が自然と上昇していくような運用が理想的です。
(2)ケガや熱中症のリスク
次に、スポーツイベントに付きものといえるのが、ケガや熱中症などの傷病リスクです。
多様性に配慮して社内運動会を任意参加とする場合、傷病が生じても労災の適用は認められない可能性が高くなります(正確な情報は、顧問社労士などにご確認ください)。
普段まったく運動していない人が、急に運動すればケガのリスクが高まることは想像できますが、意外に多いのが、体力に自信のある人のケガです。
たとえば、競技が白熱したときに、歓声や応援と相まってスイッチの入った人が、勢い余って転倒するケースが挙げられます。
(3)費用
社内運動会でかかるおもな費用として、以下が挙げられます。
・会場費
・競技用品のレンタル費
・ケータリング費
金額は、社内運動会の規模や内容にもよりますが、参加者1人あたり5千円〜1万円程度が目安です。
100人以上の規模となると、イベント企画会社に外注するケースも多くなります。
リスクを抑えて社内運動会を実施するために、事前にできる対策をご紹介します。
(1)日頃からの健康経営の導入
まず、日頃から健康経営の取り組みを進め、体を動かす習慣づくりを進めておくことが大切です。
その延長線上での社内運動会であれば、参加率の自然な上昇が見込めると同時に、傷病のリスクも軽減できます。
*2
出所)経済産業省・東京商工会議所「健康経営ハンドブック2018」p.2
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkoukeiei_handbook2018.pdf
健康経営について詳細は「健康経営ハンドブック2018」が参考になります。
以下は「職場における運動機会を提供する」部分の抜粋です。
*3
(2)年齢や体力に関係なく参加しやすいプログラム設計
次に挙げられるのが、当日プログラムの設計の工夫です。
たとえば、「リレー」「フットサル」といった競技のみではなく、「謎解き」「借り物競走」などを織り交ぜます。コミュニケーションを重視した、楽しい時間を創出しやすくなります。
従業員が無理せずに活動できるよう、十分な休憩時間を設けたり、水分補給を促すアナウンスをしたりすることも大切です。
(3)レクレーション保険の加入
労災ではカバーできないリスクの対策としては、保険加入という選択肢があります。
社内運動会の場合、「レクリエーション保険」と呼ばれる保険が適しています。行事の主催者が契約し、参加者のケガを補償する保険です。
ケガの補償がメインですが、熱中症や食中毒などの特約をセットできる商品もあります。
開催する社内運動会の内容に合わせて、選択しましょう。
本記事では「社内運動会」をテーマにお届けしました。
Twitterで「社内運動会」と検索 してみると、コロナ禍を経て社内運動会を復活させたり、離職率を下げるための施策として導入したりと、さまざまなケースが見られます。
筆者自身は、社内運動会にはさほど乗り気ではないタイプでしたが、いざ参加してみると、
「参加してよかった!」
と思ったものです。
上司の意外な面を知って距離が縮まったり、他部署と協力した熱量が日々の業務にも引き継がれたりと、ポジティブな影響が多々ありました。
その後、企画する側に回りましたが、やはり、
「参加する前は気乗りしなかったけれど、参加してみると、結果よかった」
という声を多く聞きました。
ご紹介した保険などでリスクヘッジしながら、上手に取り入れていただければと思います。
注釈
・*1
出所)東京都スポーツ推進企業交流サイト「【Vol.4】人と地域を楽しく、元気にする 運動会・体操教室・出張トレーニング」
https://www.sportscompany.metro.tokyo.lg.jp/interview/1049/
*2
出所)経済産業省・東京商工会議所「健康経営ハンドブック2018」p.2
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkoukeiei_handbook2018.pdf
・*3
出所)経済産業省・東京商工会議所「健康経営ハンドブック2018」p.30
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkoukeiei_handbook2018.pdf
三島つむぎ
ベンチャー企業でマーケティングや組織づくりに従事。商品開発やブランド立ち上げなどの経験を活かしてライターとしても活動中。